駄文集

思ったことをただ書きます

2021-01-01から1年間の記事一覧

寂しい女

私、寂しくなければそれでいいの。誰かと一緒に居られれば、それでいい。例えそうすることで完全に寂しさが拭いきれなくても、少しでさえ緩和することができるなら。 女の子はよくわからない。確かに話してて楽しいときはたくさんあるけれど、大抵は上っ面の…

冬の泡(仮)

ある日の浴槽に浸かった風呂上がり、髪がまだほのかに濡れているとき、ふと考えが及んだ。彼女が今何をしてるのか、ということだ。体が温かく満ち足りた気分だからなのか、それとも満ち足りた気分ゆえに自分だけがいる部屋の空虚さを感じ取ったからなのかは…

霜月、寂寥

夜の公園でベンチに座る。来る途中のコンビニでおでんと麦茶を購入した。おでんはたまご、大根、もち巾着、牛すじだ。頭上から照らされるライトがすんでのところで私を照らしている。私以外には誰もいない。 思い返すと、色々あった。ある物語の終幕、その中…

ある少年の夏

砂漠にも雨が降ることを知っているかい?実は40年に一度くらい降るらしいんだ。だからこれを読んでるあんたが生きてる間にも多分、降ってたときがあるってことだ。「40年に一度」は大したことないって?そうかい、でもあんたはこのことを恐らく知らなかっただ…

傷の付いたりんごがひとつ

道を歩いていました。それは初めて行く道で、長く険しいものでした。あるとき、道の途中に木があるのを見つけました。りんごの木のようです。しかもりんごはすぐ手の届く高さにありました。それはまさにりんごが、「とってくれ」と言わんばかりでした。でも私…

年月

放課後、家に着いたらすぐさまランドセルを部屋に置き、小さいポーチを持って友達の家に自転車を飛ばして行くのが日課だった。そいつの家に着き、ドアを開けると同時に玄関までドタドタと足音が響いてくる。すぐに靴を脱ぎ、かかとも揃えぬままそいつの部屋…

灰色の壁

帰宅途中、灰色の壁を見上げて自分が寂しいことを自覚した。いや、これが初めてではなかった。朝布団から上半身を起こすとき、トーストを食べようとしたとき、駅まで向かうとき、駅から大学まで歩くとき、昼食を買ってベンチに腰掛けるとき、帰りの電車を駅…

インフィニット

某国某日某所。 「総理、この度の政策についてどのようなご意見をお持ちでしょうか」 与党の参謀が尋ねた。「考えている。特に先月末にあった前代未聞な台風による被害への対応は急務だ。今各所との調整をしている」 総理はそう答えた。 この国では国民の意見を…

定期的な彼女

彼女とは昔から1週間に一度しか会えなかった。それはお互いがお互いに、相手のことに関して依存しすぎないようにするための配慮だったかもしれなかったし、毎日会えたとしたら有難みが薄れてしまうからかもしれなかった。とにかく、1週間に一度しか会えなか…

死ぬための労力が全くなかったら、恐らく情動のままに身を任せる人は多いに違いない。つまり、死ぬのが怖いというより、死ぬまでが怖いのだ。寝る前に、明るい部屋でよくこんなことを考える。でもきっと、自ら身を投げ出す人は生きてから死んだのだ。本当に…

新年

空腹を感じたので1階に降りる。ゲームを8時間連続でプレイすれば腹も減るというものだ。部屋の外の冷えきった空気を感じながら階下に行くと、起きている人間は誰もいなかった。午前7時。母親の姿はなく、父親はまだ寝ているらしい。少し前までの父親は、自分…